「葬儀用の靴を用意したいのだけれど、何を選べばいいかわからない」
「持っている靴で参列しても失礼にならないか心配だから、靴のマナーを知りたい」
葬儀は故人の死を悼み、冥福を祈る場です。
そのため、喪に服す意味を込めて身だしなみへの配慮が大切となります。
靴にも細かなマナーがあり、不適切な靴を履いていくと遺族や親族に失礼になるほか、ほかの参列者に不快感を持たせてしまう可能性もあります。
そこで、本記事では葬儀に適切な靴の選び方を男性・女性・子どもの立場に分けて解説。
家族葬への参列時や、「平服で」と指定があった場合のマナーなども紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
<この記事でわかること> ・葬儀に適した靴の基本的なマナー ・男性・女性・子どもの立場で配慮するべきマナー ・家族葬に参列する際の靴の選び方 ・「平服で」と指定された際の靴の選び方 ・雪や雨などで悪天候だった場合の対処方法 |
葬儀に適した靴とは?基本的なマナーを解説
葬儀に参列する際は、遺族や参列者に失礼のないよう、最低限以下のマナーに配慮しましょう。
- 色|黒色以外は基本NG
- デザイン|シンプルで装飾のない靴
- 素材|本革・合成皮革・布
- 中敷|落ち着いた色
なお、上記のマナーに沿う靴であればビジネスシューズでも問題はありません。
色|黒色以外は基本NG
葬儀に参列する際は「喪に服す」という意味で、男女ともに黒色の靴を着用します。
黒に近いグレー・茶色・紺は避けましょう。白やベージュなどもふさわしくありません。
デザイン|シンプルで装飾のない靴
シンプルなデザインの靴を選びます。
派手なデザインや、金具・リボンなど華美な装飾がある靴は避けましょう。
留め金がある靴を用意する場合は、金・銀ではなく黒色にします。
ファッション性を重視するのではなく、故人への敬意、遺族への弔意を示せる靴にしましょう。
素材|本革・合成皮革・布
靴の素材は、布・本革・合成皮革のいずれかにします。
布の靴が正式なマナーですが、近年は本革・合成皮革でも光沢がなければ履いても問題はありません。
ただし、本革でもワニ革・ヘビ革は避けましょう。
仏教では殺生を禁じているため、明らかに殺生を連想させるワニ・ヘビの革はふさわしくないとされています。
本革も厳密には殺生を連想させる素材ではあるものの、近年は本革の靴がフォーマルな装いとして一般的になっているため、それほど重要視されていません。
また、布製の場合はスウェード・エナメル・サテン・ベロアは避けましょう。
スウェードはカジュアルな印象を与え、エナメル・サテン・ベロアは華美なイメージにとられてしまうためです。
中敷|落ち着いた色
中敷は黒でなくてもよいですが、目立たない色を選びましょう。
茶色・ベージュなどは許容範囲ですが、ゴールド・ 赤・白などの場合は控えた方が無難です。
葬儀や通夜振る舞いの会場が畳席の場合、靴を脱ぐ場面があるためです。
気になるときは黒の中敷を購入し、参列時だけ隠す方法もあります。
【男性】葬儀に適した靴の選び方
男性の場合は革靴を履くのが一般的です。革靴を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- つま先|プレーントゥまたはストレートチップ
- デザイン|内羽根式
- 靴下|黒色
ひとつずつ解説します。
つま先|プレーントゥまたはストレートチップ
革靴のつま先は、プレーントゥまたはストレートチップを選びましょう。
つま先に装飾がないものがプレーントゥ、横一文字に切り替えのあるものがストレートチップです。
いずれも礼装にふさわしい靴ですが、紐がないタイプはあまりおすすめしません。
また、おしゃれな印象を与えるウィングチップや、カジュアルなイメージのローファー・スリッポンも避けましょう。
デザイン|内羽根式
靴紐を通す部分は内羽根式が理想です。
革靴の紐を通す部分には内羽根式と外羽根式があり、フォーマルとされているのは内羽根式なためです。
外羽根式でも間違いではありませんが、内羽根式よりもカジュアルになってしまいます。
外羽根式を選ぶ場合は、つま先がプレーントゥのシンプルな靴にしましょう。
靴下|黒色
靴下は黒無地が原則です。ミドル丈でくるぶしが出ない長さを選びましょう。
目立たないブランドロゴのワンポイント程度であれば許容範囲ですが、目立つ柄や派手なワンポイントは避けましょう。
立っているときはズボンの裾で隠れても、座った際に見えてしまいます。
【女性】葬儀に適した靴の選び方
女性の方は、靴を選ぶ際に以下のポイントに配慮しましょう。
- つま先|ラウンドトゥまたはスクエアトゥ
- ヒール|3〜5㎝で太めのもの
- ストラップ|シンプルで金具がないもの
- ストッキング|透け感のある黒色
- ペディキュア|落とすか目立たない色
ひとつずつ解説します。
つま先|ラウンドトゥまたはスクエアトゥ
パンプスのつま先は、丸い形状のラウンドトゥもしくは横一直線にカットされたスクエアトゥを選びましょう。
先端が尖っているポインテッドトゥは華美な印象を与えるためふさわしくありません。
つま先が見えてしまうオープントゥは、カジュアルな印象になるほか、「つま先が見える=妻が先立つ」といった縁起の悪さからふさわしくないとされています。
また、ビジネスライクでよく見るローファーも葬儀ではマナー違反です。
ヒール|3〜5㎝で太めのもの
ヒールは3〜5cmで太めのものがよいでしょう。履いた際の安定感とマナーを両立できます。
高さが3〜5cmであっても、ピンヒールは華美な印象を与えかねないため避けた方が無難です。歩いたときにコツコツと音が響いてしまう原因にもなります。
反対に、かかとのないペタンコな靴はカジュアルな印象を与えてしまいます。事情がある場合を除いて、ヒールは3〜5cmで太めのものを選びましょう。
また、ウェッジソールやヒールだけ色が違うものも葬儀の場では不適切とされています。
ストラップ|シンプルで金具がないもの
歩きやすさや安定性を重視したシンプルなストラップは、マナー的に問題ありません。むしろ、ヒールで歩くのに慣れていない人にはおすすめです。
ストラップ付きを選ぶ際は、金具のないものや留め具が黒いものにしましょう。リボンなど装飾がついているものは避けるのがマナーです。また、バックストラップの靴はカジュアルな印象となり、葬儀には相応しくありません。
ストッキング|透け感のある黒色
ストッキングは黒色で透け感のあるものを選びましょう。理想は30デニール前後です。冬場でも80デニール程度に留めておくのがよいでしょう。
なお、ラメ入りや網タイツなど、デザイン性の高いものは喪に服す装いとしてふさわしくありません。シンプルな黒のストッキングやタイツを選びましょう。
ペディキュア|落とすか目立たない色
足の爪にほどこすペディキュアは落とすのがマナーです。急な葬儀で落とすのが間に合わない場合は、以下の対策をとりましょう。
- 絆創膏で隠す
- 黒いフットカバーを履く
畳席の場合はストッキングから爪の色が見えてしまうため、ベージュやクリアネイルなど目立たない色を除いて落とすのが基本です。
【子ども】葬儀に適した靴
子どもの場合は年齢にもよりますが大人ほど身だしなみに厳しくはありません。
以下の条件に当てはまるのであれば、どの靴を選んでもよいとされています。
- デザイン・色|派手でなければよい
- 靴下|シンプルで落ち着いた色
ひとつずつ見ていきましょう。
デザイン・色|派手でなければよい
地味な色やデザインの靴を選びましょう。色は黒・紺・茶・グレーなどが望ましいです。
また、子どもの場合はローファーやスニーカーでもよいとされているため、歩きやすく脱ぎ履きしやすい靴を選んであげましょう。
ただし、サンダルやブーツは子どもでも不適切とされています。
ほかにも、蛍光色・キャラクターデザイン・音が鳴る靴なども避けたほうが無難です。
制服で学校指定の靴がある場合は、指定靴を着用しましょう。
靴下|シンプルで落ち着いた色
靴下は黒または白の無地が理想です。派手な色や柄は避けた方がよいでしょう。
また、ルーズソックスなど、無地ではあるもののデザイン性の感じられる靴下も不適切とされています。
4つの状況別・葬儀用の靴のマナー
以下4つの状況における靴のマナーを解説します。
- お年寄りや妊婦の場合
- 家族葬に参列する場合
- 「平服で参列」と指定された場合
- 雪や雨など悪天候だった場合
マナーが変わらない場合や、反対に寛容になる場合があるため、前もって確認しておきましょう。
お年寄りや妊婦の場合
年齢により歩行が不安定な方や、転倒リスクを避けたい妊婦の場合はマナーよりも履きやすさや歩きやすさを優先して問題はありません。
脱ぎ履きしやすく、軽くて疲れにくい靴を選びましょう。
黒色の無地という条件は絶対ですが、ローヒールやかかとのない靴、脱ぎ履きしやすい外羽根式でもよいとされています。
最低限のマナーには配慮しつつ、自分の状況にあった靴を履きましょう。
家族葬に参列する場合
家族葬に参列する場合も、靴のマナーは変わりありません。
黒無地で布・本革・合成皮革のシンプルなものを選びましょう。
参列者の面々によっては多少のマナー違反は気にされない可能性もありますが、故人や遺族を思うのであれば、場の雰囲気を壊さないよう靴や服には配慮しましょう。
「平服で参列」と指定された場合
参列時に「平服で」と指定された場合も、靴に関してのマナーは変わりありません。黒色の布・本革・合成皮革で装飾のない靴を履きましょう。
なお、「平服」は普段着とイコールではありません。葬儀における平服は「略喪服」を指します。
ブラックスーツやダークグレーなど、地味で落ち着いた色のスーツ・ワンピース・アンサンブルが略喪服です。
平服で参列する際のマナーについては以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
【関連記事】急な葬儀で喪服がない場合の対処方法や最低限守るべきマナーを解説
雪や雨など悪天候だった場合
雪や雨などで天候が悪く、革靴やパンプスが汚れてしまう場合は、ブーツや長靴で会場へ向かっても問題はありません。
会場についたら玄関先やクロークで正規の靴へ履き替えましょう。
自家用車で会場へ向かう場合は、車内で革靴やパンプスに履き替える方法もあります。
急なお通夜でどうしても用意が間に合わない場合を除いて、ブーツや長靴のまま参列するのは基本的にマナー違反です。
葬儀用の靴を購入する方法
葬儀用の靴は、全国展開している衣料品店やスーツ店で購入できます。5,000円〜10,000円を想定しておけばお釣りがくるでしょう。
葬儀用の靴は高価である必要はなく、葬儀にふさわしいデザインで、足に合っていることが大切です。
「安い靴で参列するのは失礼にならないか」と不安になる方もいらっしゃいますが、デザインが相応であれば数千円の靴でも問題はありません。
購入する際の注意点
葬儀用の靴を購入する際は、色やデザインはもちろんのこと、足のサイズに合っているかが重要です。
サイズが合わない靴を履いて参列した場合、歩いたときにかかとが脱げてしまったり、靴擦れをおこしたりと問題が発生します。
特にかかとが脱げてしまう靴は、周囲から悪い印象を持たれる可能性があります。
購入時は必ず試し履きし、サイズが合っているか確認しましょう。かかとをつけた状態で、つま先に0.5〜1.5cmの余裕がある靴が理想です。
数メートル歩いてみてかかとが脱げないか、歩く際にくるぶしが靴に当たらないかも確かめておくとよいでしょう。
少しでも合わない場合は、中敷で調整する方法もあります。
どうしても用意できない場合
急な訃報でどうしても用意できない場合は、葬儀社にレンタルする方法があります。ただし、全ての葬儀社がレンタル対応している訳ではないため、電話で確認しましょう。
レンタル可能と返答をもらった場合は、会場へ少し早く到着しておき、受付で靴をレンタルします。
葬儀社でなくても衣装レンタルをしている店舗がある場合は、葬儀用の靴を借りられないか確認しましょう。
また、知人に靴を借りる方法もあります。この場合は、靴のサイズに注意しましょう。
葬儀会場で靴を間違えない方法
会場が畳席の場合、会場へ入る際に靴を脱ぎます。皆似たようなデザインの靴を履いてくるため、葬儀後に自分の靴がどこにあるのか分からなくなることが度々発生します。
そのため、自分の靴と一目でわかる工夫をするのがおすすめです。
例えば、靴に自分しかわからない目印をつける・小さなクリップを挟む、のような方法です。
葬儀用の靴の管理方法
葬儀への参列は頻繁にあるものではないため、葬儀用に購入した靴を数年間使わずに眠らせていたという方も多くいらっしゃいます。
適切に保管しておかなければ、いざというときにカビが生えていたり、形が崩れて履けない状態になっていたりする可能性があります。
購入したあとには、防水スプレーを噴霧してカビや汚れを防ぐほか、シューキーパーで型崩れを防ぐなどの管理を行いましょう。
まとめ:おしゃれよりも葬儀にふさわしいかが重要
葬儀に参列する際は、服装だけでなく足元への配慮も必要です。
靴は無地の黒色にし、素材は布・本革・合成皮革を選びましょう。装飾のないシンプルな靴が理想です。
葬儀の場では、おしゃれよりもマナーが優先されます。自身が着飾る必要はないため、不適切な靴で周囲に不快感を与えるのではなく、故人と遺族の気持ちに配慮した靴を選びましょう。
故人の冥福を祈る場であることを意識した靴を履くのが大切です。