近年は家族葬が主流となり、葬儀の準備にあたって、戒名が必要なのかどうか、迷っている方もいらっしゃるでしょう。
戒名をつけるとつけないのとでは、どんな違いがあるのか、気になると思います。親戚やお寺とのお付き合いにおける後々への影響についても知っておきたいですよね。
実は、戒名が必要かどうかを決めるには、「4つの判断ポイント」があり、簡単にチェックすることができます。
そこで本記事では、家族葬における戒名に関してあらゆる疑問を解消できるよう、詳しい知識や戒名料などを分かりやすくご紹介しますので、どうぞご覧ください。
家族葬と戒名の関係とは?
戒名の有無は、家族葬へ参列する遺族や親戚なら誰もが分かる仕組みとなっています。
家族葬とは、家族や親族など少人数で執り行うお葬式で、アットホームな雰囲気なのが最大の特徴です。
近年は家族葬専用の斎場も増えていますが、家族葬は祭壇と席との距離が近い省スペースで行われます。
また、遺族や親族は家族葬で斎場へ到着すると、お葬式の前に遺影とお位牌に向かい、お線香をお供えするのが一般的です。
そのため、葬儀の参列者の中には「どんな戒名をつけたのかな?」と、祭壇に配置されたお位牌の文字に注目する方もいるでしょう。
また、戒名はお位牌に書くだけでなく、僧侶による読経で必ず読み上げられます。
つまり、家族葬では戒名の有無はもとより、具体的な呼称まで、参列者全員に分かるようになっていることを知っておきましょう。
なお、家族葬の費用相場や特徴に関しては、「家族葬の費用や相場はどれくらい?従来の葬儀との違いは?」の記事でご紹介していますので、どうぞご覧ください。
戒名(かいみょう)とは?
戒名について知っておきたい基礎知識に関して、学びやすい順序でご紹介します。
- 戒名の意味と役割
- 戒名の文字構成
- 宗教による戒名の付け方の違い
戒名の意味と役割
戒名とは、故人が極楽浄土へ行くために僧侶から授けてもらう名前のことをいい、亡くなられた方の霊を安らかに成仏させる役割があります。
また、かつては仏教の戒律を守り、仏の教えに帰依する修行僧へ与えられる名前でしたが、現在は出家の有無に関わらず、仏教徒として生前に授かることも可能です。
なお、戒名は仏教独自のものですが、神道では「霊号」「諡(おくりな)」、キリスト教なら洗礼名として授かるクリスチャンネームがあります。
戒名の文字構成
戒名は、「院号・道号・戒名・位」と、次の4つから構成されています。
- 院号(院殿号):寺院に対する高い貢献度や、身分・功績の証として授かるため、一般的にはなかなか授かることができません。
- 道号:戒名とのバランスで、特技・趣味・性格・業績を讃える文字を用いることが一般的です。縁起の悪いもの、お祝いごと、動物、人の体を示す文字を避けます。
- 戒名:2文字で表します。一般的には生前の俗名から一文字を流用します。
- 位号:仏教徒としての位を表し、性別や年齢、地位により、位の高い順に「大居士・清大姉→居士・大姉→禅定門・禅定尼→清信士・清信女→信士・信女」となります。
宗教による戒名の付け方の違い
戒名は浄土真宗で「法名(ほうみょう)」と呼ぶほか、宗派によって違いがあり、先頭に梵字を付ける場合や、「日号(法合)」といった別の呼び名もあります。
- 真言宗:梵字+院号+道号+戒名+位号
- 天台宗:院号+道号+戒名+位号
- 浄土宗:院号+誉号+戒名+位号
- 浄土真宗:院号+釋号+法号
- 曹洞宗・臨済宗:院号道号+戒名+位号
- 日蓮宗:院号+道号+日号(法合)+位号
戒名の有無によるメリットとデメリット
戒名の有無によるメリットとデメリットや、戒名の必要性を考えるうえでの理由と影響の違いは次のとおりです。
戒名をつける場合
【メリット】
- お寺や親族とのお付き合いを良好に保てる
- 故人をしっかりと供養できる
【デメリット】
- お布施として戒名料の支払いが発生する
戒名をつける理由と影響
本来ならば、仏教で葬儀を行う以上、戒名は必要不可欠なため、故人の血縁者にとってはきちんと供養してもらえる印象を受けるでしょう。
そもそも葬儀とは、故人の死を悼み、冥福を祈るために執り行われる宗教的な儀式であり、人生最期の大切な行事です。
特に、夫婦両家の集う家族葬では、戒名の位についてまで相手側の立場を考慮して検討するべきで、円満な関係を続けるためにも戒名が必要といえます。
戒名は、お位牌のみならず、お墓の墓石(墓誌)にも彫刻して代々残してゆくことができるため、子孫にも家系図として継承できます。
唯一ネックになるのは、戒名料というお布施の負担のみとなりますが、戒名料は初回の負担のみで永久に使用することが可能です。
しかし、支払った戒名のお金は、お寺の維持費や僧侶を支える一助となるため、先々の法要や供養のお願いもしやすくなるでしょう。
戒名をつけない場合
【メリット】
- 戒名料が不要なためお布施の費用を抑えられる
【デメリット】
- お付き合いのある寺院に対して失礼にあたり、寺院のお墓へ納骨できない
- 家族や親族から非難される場合がある
戒名をつけない理由と影響
宗教への信仰心がなく、戒名の価値を理解できない方が「戒名は必要ない」と考えても無理はありません。
しかし、無宗教であっても、形式として僧侶を呼んで、お葬式らしい雰囲気にしたいというご家庭もあるでしょう。
戒名がない葬儀の場合、お位牌や読経には「俗名(ぞくみょう)」という生前の名前を使用します。
つまり、俗名で問題なければ、戒名料の発生がなく、お布施の費用も抑えられるため、お金の面ではメリットが大きいといえます。
ただし、故人の安らかな永眠を願う親戚の中には、戒名がないと不自然に感じたり、不服に思う方がいることは知っておかなければなりません。
戒名をつけるかどうかを決める4つの判断ポイント
戒名をつけるかどうか迷う場合、次の4つの判断ポイントを確認してください。一つでも当てはまる項目があれば、後々まで後悔しないよう、戒名をつけましょう。
- お付き合いのあるお寺がある
- 寺院の墓地や納骨堂へ納骨する
- 故人をしっかりと供養したい
- 故人の親や兄弟姉妹で宗教や戒名にこだわりがある人がいる
① お付き合いのあるお寺がある
お寺の檀家など、お付き合いのあるお寺があるご家庭は、戒名をつけないとトラブルになる可能性が高いため注意が必要です。
檀家にはお寺を経済的に支える役割がある一方、お寺からは読経による手堅い供養を行ってもらえます。
故人に戒名をつけないことは仏教徒としての教えに反する行為にあたるので、お葬式での読経を断られたり、離檀を求められる可能性もあるため注意しましょう。
② 寺院の墓地や納骨堂へ納骨する
戒名をつけないと、お寺にお墓を所有していても、埋葬や納骨を断られる可能性があるため注意しなければなりません。
お寺にあるお墓は檀家墓地と呼ばれ、その宗派の信徒として遣える必要があります。
ご先祖様が眠るお墓などの場合、親族へも迷惑をかける可能性があるため、周囲や先々のことまで考えて判断するべきといえるでしょう。
③ 故人をしっかりと供養したい
故人をしっかりと供養したい場合は、宗教の教えに従い、戒名を授かった方が安心できるでしょう。
亡くなった人にロウソクやお線香を用いるのには理由があり、ロウソクには闇で迷わぬように故人を照らし、お線香には香煙を通じて仏様と対話する役割があります。
このように、仏事の作法や習慣にはきちんと理由があるため、少しずつ知識を学んでいただければ幸いです。
大切な人の死をきっかけに、仏教に触れる機会ができる方はたいへん多いため、分からないことは葬儀社や僧侶に尋ねても決して恥ずかしいことでありません。
④ 故人の親や兄弟姉妹で宗教や戒名にこだわりがある人がいる
ご先祖様の供養を大切にしている家系では、お寺とのお付き合いも大事にしています。そしてそのような家系では、多くの方が「戒名は授かって当然」と認識しています。
故人の死をきっかけに、戒名の有無で不仲になってしまっては、何よりも故人が悲しむことでしょう。
少なくとも故人の血縁者にあたる親や兄弟姉妹へは、戒名についてどのようにするか、相談することをおすすめします。
戒名の費用と料金の相場
戒名の料金は「戒名料」と呼ばれ、全国的な相場費用は約20~30万円ですが、実際の費用は「無料0円~100万円以上」と、幅広い価格帯となっています。
戒名のランクによる戒名料の違い
戒名は宗派ごとに階級があり、そのランクによって戒名料が大きく異なります。
- 院居士・院大姉:約100万円~
- 院信士・院信女:約50万円~100万円
- 居士・大姉:約50万~80万円
- 信士・信女:約10万~50万円
※上記は全国的な相場です。
また、総本山を筆頭に、寺格と呼ばれる寺院の格式によっても、戒名料は違います。
地域性による戒名料の違い
戒名料は地域によっても異なり、北海道では、無料0円~約30万円(自社調べ)と、全国の平均相場よりも安く、リーズナブルなのが特徴です。
戒名をつける方法
戒名をつける際は、お付き合いのあるお寺があるかどうかによって手配先が異なります。
お付き合いのあるお寺がある場合
お付き合いのあるお寺がある場合は、必ずそのお寺へ葬儀での読経と戒名を依頼しましょう。
予算を伝えて、どのような戒名になるかを事前に確認することは失礼にあたりません。希望する位があれば、金額を確認してから検討した方が安心です。
戒名料は読経料と一緒に包んでお渡ししても構いませんので、「読経料と併せてどのぐらいですか?」と、お布施の総額を確認しても良いでしょう。
なお、お布施の相場金額や準備方法は、「家族葬のお布施の相場金額【図解付き】表書きとお金の入れ方や渡し方」の記事で僧侶への渡し方の手順まで詳しくご紹介していますので、どうぞご参照ください。
お付き合いのあるお寺がない場合
地域や宗派によっても異なりますが、お付き合いのあるお寺がない場合、地域の葬儀社へ依頼すればお寺を紹介してもらうことができます。
また、近年は僧侶派遣サービスもあり、リーズナブルな料金で戒名をつけてもらうことも可能です。
戒名に関してよくある質問5選
戒名に関してよくある5つの質問をまとめてご紹介しますので、どうぞ参考になさってください。
- 戒名は自分でつけてもいい?
- お位牌への戒名の書き方は?
- お位牌の準備方法は?
- 本位牌の選び方とは?
- お仏壇へのお位牌の置き方は?
戒名は自分でつけてもいい?
お付き合いのあるお寺がなく、寺院墓地やお寺の納骨施設へ納骨しない場合なら、自分で戒名をつけても問題ないでしょう。
「名は体を表す」と言いますが、戒名は終活の一貫として、生前に自分自身で考える方もいらっしゃいます。
どのような生涯を送るか、あの世での名前を考えることで、自分らしさを文字に表現することができるためです。
最近はAIが搭載されたアプリで戒名を作成する方法もあるため、無宗教の方なら試してみるのも良いでしょう。
お位牌への戒名の書き方は?
葬儀で使用する白木位牌をもとに、次の項目をバランスよく書き入れます。
- 梵字・戒名(法名・法号):宗派や階級により異なります
- 俗名:生前の名前
- 没年月日:逝去日
- 享年:生まれた年を1歳と数えます(行年:満年齢)
葬儀社や仏壇店でお位牌を購入する際には、白木位牌の表裏の写真を撮影した画像データを提示すると、文字の間違いを防げるためおすすめです。
お位牌の準備方法は?
四十九日法要では、葬儀で使用した仮の白木位牌から本位牌へと交換するために、魂入れの儀式を行います。
仏壇店では文字入れに通常、1週間~10日程度の期間を要するため、四十九日の2週間前までには注文をしましょう。
お位牌の文字は「手書き・手彫り・機械彫り」のいずれかの方法で行いますが、お位牌の種類に応じて、お好みの方法を選びます。
本位牌の選び方とは?
お位牌は大きく分けて2種類のタイプがあります。
- 札位牌:故人一人もしくはご夫婦の単位、先祖代々の霊位として用意する一般的なお位牌。
- 回出位牌:繰り出し位牌とも呼ばれ、札板が複数枚納められる仕様になっており、代々に亘って利用できる。
お仏壇に似合う種類やサイズのお位牌を選ぶことが最良なため、お仏壇と同時に購入するのがおすすめです。
既にご先祖様のお位牌がある場合は、それより大きくならないように、 ご夫婦の場合は妻のお位牌が夫より大きくならないようにします。
なお、浄土真宗の場合はお位牌ではなく、過去帳を利用するのが一般的ですが、近年ではお仏壇のデザインに合わせてお位牌を用意する方も増えています。
お位牌を希望する場合は、トラブル回避のため、あらかじめお付き合いのあるお寺へ確認しましょう。
お仏壇へのお位牌の置き方は?
お位牌はご本尊の一つ下段へ配置します。段差のない小さなお仏壇ではご本尊の右側へ置きましょう。
また、ご先祖様のお位牌がある場合には、古い順に右上から並べてください。
まとめ:家族葬の戒名が必要かどうか判断するには4つのポイントをチェックしよう
家族葬の特徴を踏まえて、戒名をつけるかどうか迷う場合の判断ポイントと、費用などの戒名の知識についてご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。
- 家族葬では戒名の有無や具体的な戒名が参列者全員に伝わりやすいため、戒名をつける、つけないを検討する場合、慎重に考える必要がある。
- 戒名が必要かどうか迷う場合は、4つの判断ポイントをチェックして、いずれかに該当する場合は戒名をつけた方が良い。①お付き合いのあるお寺がある ②寺院の墓地や納骨堂へ納骨する ③故人をしっかりと供養したい ④ 故人の親や兄弟姉妹で宗教や戒名にこだわりがある人がいる。
- 戒名の費用は階級によって異なり、地域や宗派によっても異なるため、事前にお付き合いのあるお寺へ読経料と併せてお布施を確認する。
- お付き合いのあるお寺がなくても、葬儀社や僧侶派遣サービスを依頼すれば、戒名をつけることができる。
コープの家族葬では、リーズナブルな費用で葬儀や法要の僧侶手配まで対応可能です。
戒名が必要な方へは、明瞭価格でお見積りいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。