「忌み言葉にはどのような種類がある?」
「言い換えたい時はどうすればいい?」
葬儀にはさまざまな細かいマナーが存在します。特に日本では、口にしたことが現実になる「言霊」を大切にしているため、言葉遣いへの配慮が必要です。
なかでも使用するべきではないとされる「忌み言葉」は、把握しておいて損はありません。
遺族や参列者に悲しい思い・不快な思いをさせないためにも、忌み言葉の種類と言い換え方は事前に理解しておきましょう。
<この記事でわかること>
- 忌み言葉の種類と言い換え方
- 忌み言葉以外で配慮するべき言葉のマナー
- 宗教・宗派で異なる言葉のマナー
忌み言葉とは
忌み言葉とは、葬儀の場で使わないほうがよいとされている言葉のことです。「いみことば」と読みます。
日常的には問題のない言葉でも、葬儀で使うと「縁起が悪い」「不幸が続く」として使うのを避けるべきとされています。
葬儀で忌み言葉を使ってはいけない理由
忌み言葉は、以下の理由により使ってはいけないとされています。
- 日本では「言霊」を大切にしているため
- 遺族を傷つけないため
- 非常識と思われないため
ひとつずつ見ていきましょう。
日本では「言霊」を大切にしているため
日本には古来より「言霊(ことだま)」という考え方があります。「言葉には霊が宿り、口に出したことは実現する」という考え方です。
縁起の悪い言葉や不吉な言葉を口にするとさらなる不幸を招くとされ、葬儀の場ではNGワードとされています。
遺族を傷つけないため
忌み言葉に不吉なことや不幸な出来事が連想され、遺族を意図せず傷つけてしまう可能性があります。
葬儀は、故人との別れを惜しみ遺族の悲しみを弔う場です。忌み言葉に配慮し、故人を偲ぶ気持ちや遺族への思いを丁寧に伝えることが大切です。
非常識と思われないため
会社関係者として葬儀に参列する場合、忌み言葉を把握しておかなければ非常識な人と思われる可能性があります。
遺族や他の参列者への配慮のためにも、会社や職場の評判を落とさないためにも、忌み言葉の種類と言い換え方を覚えておきましょう。
忌み言葉の一覧と言い換え方
忌み言葉には大きく分けて以下の4種類があります。
- 直接的な表現・「死」を連想させる言葉
- 不幸の連続を連想させる「重ね言葉」
- 「不幸が続く」を連想させる言葉
- 「不吉」を連想させる言葉
ひとつずつ見ていきましょう。
直接的な表現・「死」を連想させる言葉
葬儀では、故人の逝去を直接的に表現する言葉や、「死」を連想させる言葉は避けるべきとされています。代表的な言葉と言い換え方は以下のとおりです。
直接的な言葉 |
言い換え方 |
---|---|
死ぬ |
逝去・亡くなる・他界 |
急死 |
突然のこと・急逝 |
生きていた・生存中 |
お元気な頃・生前 |
遺族を傷つけてしまう可能性があるため注意しましょう。
不幸の連続を連想させる「重ね言葉」
「重ね言葉」とは、同じ音が続く言葉です。「不幸が重なる」「不幸を繰り返す」という意味を連想させるため、使用は控えるべきとされています。
重ね言葉の一覧と言い換え方は以下のとおりです。
重ね言葉 |
言い換え方 |
---|---|
重ね重ね |
深く・加えて |
いろいろ |
多くの・さらに・もっと |
度々 |
よく・しげく |
次々 |
たくさん・立て続けに・休みなく・ひっきりなしに |
くれぐれも・重々 |
十分に・よく・どうぞ |
ぜひぜひ |
ぜひとも・ぜひ |
ますます |
もっと・一段と・よりいっそうの |
みるみる |
見るまに |
近々 |
近いうちに |
わざわざ |
あえて・特別に |
どんどん |
たくさん |
日々 |
毎日 |
ときどき |
時折 |
たまたま |
思いがけず・珍しく |
だんだん |
少しずつ |
つくづく |
心から |
いよいよ |
一段と |
返す返すも |
本当に・まことに・思い起こせば・振り返ると |
立て続けの不幸を連想させ、遺族を不安な気持ちにさせてしまう可能性があります。
「不幸が続く」を連想させる言葉
重ね言葉とは違いますが、「不幸が続く」ことを連想させる言葉があります。葬儀の場では控えるべきとされているため、使用には注意しましょう。
一例と言い換え方は以下のとおりです。
「不幸が続く」を連想させる言葉 |
言い換え方 |
---|---|
再び |
今一度・改めて・さらに |
また |
さらに・改めて |
続いて・追って |
後ほど |
引き続き |
これからも |
遺族の心情に配慮し、上記の言葉へ言い換えるようにしましょう。
「不吉」を連想させる言葉
直接的な表現ではないものの、不吉な意味を連想させる言葉は控えるべきとされています。代表的な言葉と言い換え方は以下のとおりです。
不吉を連想させる言葉 |
言い換え方 |
---|---|
切れる |
新たな道を歩む |
終わる |
ゴールを迎える |
数字の「4」「9」 |
基本的に使用しない |
特に、葬儀前後の挨拶を任された場合は注意が必要です。
宗教・宗派によっては不適切とされる言葉
忌み言葉には該当しないものの、宗教・宗派によっては不適切とされる言葉が存在します。本章では、以下の宗教・宗派に分けて注意するべき言葉を解説します。
- 仏教全般
- 浄土真宗(仏教)
- 神道・キリスト教
ひとつずつ見ていきましょう。
仏教全般
仏教には「故人が極楽浄土へ行き、成仏することを願う」という考え方があります。
そのため、成仏できないことを連想させる言葉は控えましょう。
「浮かばれない」「迷う」などが該当します。
浄土真宗(仏教)
同じ仏教の中でも、各宗派で死生観が異なります。特に浄土真宗では「即身成仏」の教えがあるため、以下の言葉は使用しないのがマナーです。
- 冥土
- 冥福
- 霊前
可能であれば、葬儀に参列する前に故人の宗派を確認しておきましょう。
神道・キリスト教
仏教では問題がなくても、他の宗教では不適切とされる言葉があります。
基本的には、仏教用語は使用しないのがマナーです。以下の言葉が仏教用語に該当します。
- 往生
- 成仏
- 供養
- 冥福
これらの言葉と同じ意味を伝えたい場合は、以下のように言い換えましょう。
宗教 |
言い換え方 |
---|---|
キリスト教・カトリック |
帰天(きてん) |
キリスト教・プロテスタント |
昇天(しょうてん) |
神道 |
平安 |
忌み言葉以外で気を付けるべき言葉のマナー
葬儀の場では、忌み言葉以外にもさまざまな配慮が必要です。言葉に関するマナーでは、以下の点に注意しましょう。
- 文面では句読点の使用を避ける
- 故人の死因は尋ねない
- お悔やみの言葉は簡潔に
ひとつずつ解説します。
文面では句読点の使用を避ける
文面では句読点を使わないのがマナーです。
句読点は文章を区切るために使用する言葉なため「葬儀が滞りなく終わりますように」という意味を込めて使用を控えます。
そのため、本来句読点を使用する部分は、空白や改行で区切るのが一般的です。
故人の死因は尋ねない
葬儀の場で遺族と会話する際、故人の死因は尋ねないようにしましょう。遺族の悲しみを増幅させてしまう可能性があるためです。
状況によっては、逝去の原因は自分のせいだと攻めてしまうかもしれません。
大前提として、葬儀は故人を悼み弔うためのものであり、死因を聞くところではありません。遺族から教えてもらえるタイミングを待ち、適切な言葉がけを行いましょう。
お悔やみの言葉は簡潔に
葬儀でお悔やみの言葉を伝える際には、なるべく手短に簡潔に述べるよう意識しましょう。
大切な家族を亡くされた遺族にとって負担が大きい葬儀で、さらなる負担や疲労をかけないためです。
また、長々としたお悔やみ言葉は、かえって悲しみを増幅させてしまうかもしれません。
遺族の気持ちを慮り哀悼の意を表するのが目的なため、できるだけ簡潔に伝えるようにしましょう。
まとめ:大切なのは遺族を思いやる気持ち
「忌み言葉」とは、葬儀の場で控えるべきとされている言葉です。遺族の悲しみを増幅させないために使ってはいけないと言われています。
葬儀に参列する際は、忌み言葉や重ね言葉、不吉な言葉などを避け、故人を偲ぶ気持ちやご遺族への思いを丁寧に伝えることが大切です。
また、死因を尋ねない・お悔やみの言葉は簡潔に述べる、のような配慮も必要です。
これらのマナーを守り、ご遺族に失礼のないように葬儀に参列するようにしましょう。