「数珠の持ち方にマナーはある?」
「葬儀に参列する際、数珠は必ず必要なの?」
数珠は葬儀に参列する際、必須といってよいほど大切な仏具です。
しかし、急な訃報で数珠を用意できなかったり、用意できても作法が分からず戸惑ってしまったりということもあるでしょう。
そこで本記事では、数珠を持つ意味・宗派ごとの数珠の持ち方・数珠が用意できないときの対処方法を解説します。
葬儀に参列する予定の方は、ぜひ参考にしてみてください。
<この記事でわかること> ・葬儀で数珠を持つ意味 ・宗派別の数珠の持ち方 ・葬儀における数珠の基本的なマナー |
葬儀に持参する「数珠」とは
数珠とは、通夜・葬儀・告別式で使用する仏教の法具です。「念珠(ねんじゅ)」ともいわれています。
煩悩の数と同じ108個の玉が連なっていますが、簡易版として20玉〜40玉程度の玉数が少ない種類もあります。
本来、僧侶が読経する際に、唱えたお経の回数を数えるために使用されていましたが、近年ではお経を読まない参列者も持つのが一般的です。
本章では、数珠に関する以下の内容について解説します。
- 葬儀に数珠を持っていく意味
- 数珠の種類は大きく2つある
それぞれ見ていきましょう。
葬儀に数珠を持っていく意味
葬儀に数珠を持っていくことには「仏様に対して失礼のないようにする」「故人の冥福を祈る気持ちを伝える」といった意味があります。
また、魔除けや厄除けの意味もあるともいわれています。
葬儀ではできる限り持参するのが望ましいとされており、比較的規模が小さな家族葬でも持参するのがマナーです。
なお、キリスト教や無宗教の葬儀の場合、数珠は必要ありません。
数珠の種類は大きく2つある
数珠には大きく分けて「本式数珠」と「略式数珠」の2種類があります。違いは以下のとおりです。
本式数珠
(本式念珠) |
宗派ごとに決められた正式な数珠。
108個の玉からなり、素材・房の色・房の数などに宗派特有の決まりがある。 2輪にして使用する場面がほとんど。 |
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略式数珠 | 本式数珠を簡略化した数珠。
玉の数や玉の素材に決まりはなく、宗教・宗派問わず使用可能。 「片手数珠」ともいわれている。 |
近年は略式数珠を使用する割合が多い傾向です。
なお、本式数珠は自分の宗派にそった物を用意するのが基本で、他宗派の葬儀に参列した際も、自分の数珠を使用してよいとされています。
基本的な数珠の持ち方
数珠には、持ち運び方・葬儀中の持ち方に基本的なマナーが存在します。
<持ち運び方>
数珠はバッグやポケットに入れて持ち運びます。
直接入れると傷の原因になるので、専用の袋を持参するのがおすすめです。
<葬儀中の持ち方>
葬儀中は常に左手首に数珠を掛けます。本式数珠は長いので、2連にして持ちましょう。
左手に掛ける理由は、左手が仏様の世界、右手は現世を表すといわれているためです。
合掌時は、以下の宗派ごとに持ち方が異なります。
- 日蓮宗
- 浄土宗
- 浄土真宗本願寺派・大谷派
- 真言宗
- 臨済宗・曹洞宗
- 天台宗
それぞれの持ち方について見ていきましょう。
なお、持ち方と合わせて、各宗派ごとの焼香の作法も簡単に解説しています。細かな焼香のマナーについては以下の記事でも紹介しているためぜひ参考にしてみてください。
家族葬における焼香のやり方やマナーを解説|焼香だけの参列についても説明
日蓮宗
日蓮宗の本式数珠は、房が片側に2本、もう片側に3本付いているのが特徴です。
<合掌時の持ち方>
合掌する際は数珠を二輪にして左手に掛け、右手を合わせます。房は自然に下に垂らすようにしましょう。
<お題目を唱える際>
お題目を唱える際は、数珠を8の字になるように1回ねじり、両手中指の第一関節あたりに掛けます。房が3つある方を左手、房が2つある方を右手にし、両手を合わせて合掌するのが基本の持ち方です。
<焼香時の作法>
焼香の際は数珠を左手に持ち、右手で焼香を1〜3回行います。額には押し頂かず、胸の位置で香炉にくべるのが一般的です。
浄土宗
浄土宗の数珠は、2つの数珠が鎖のように組み合わされた「日課数珠」と呼ばれる形式です。
<合掌時の持ち方>
合掌する際は、数珠を二輪にして両方の親指に掛けます。その際、親玉を挟むように持ち、房は手前(自分側)に垂らしましょう。
<焼香時の作法>
焼香の際は左手首に数珠を掛け、1〜3回焼香を行います。回数に決まりはありませんが、3回する方が多いです。
浄土真宗本願寺派・大谷派
浄土真宗本願寺派・大谷派の本式数珠は「門徒用念珠」と呼ばれるものです。
両端に房がついており、片方が「蓮如(れんにょ)結び」、もう片方が「つゆ結び」と呼ばれる特徴的な結び方をしています。
浄土真宗の場合、一般的には男性が略式数珠、女性が本式数珠を使用します。
しかし、本願寺派は女性も略式数珠を持つのが望ましいとされているため、購入する前に親戚や菩提寺にどちらが良いか確認しておきましょう。
<合掌時の持ち方>
本願寺派・大谷派は、数珠を両手に通し、親指に掛けて合掌します。房は自然に下に垂らしましょう。本式数珠の場合は、2輪にして行います。
<焼香時の作法>
本願寺派は1回、大谷派は2回行います。
額に押し頂かずに、胸の高さ程度まで上げたのち、香炉へくべましょう。
真言宗
真言宗の本式数珠は「振分念珠」と呼ばれる数珠を使用します。
<合掌時の持ち方>
数珠を左手首に掛け、長い状態で手を合わせます。
また、日蓮宗と同じく両中指に掛けて数珠を挟むように合掌する場合もあります。
どちらの持ち方にしたらいいか分からない方は、葬儀社や菩提寺に確認するとよいでしょう。
<焼香時の作法>
焼香の回数は3回で、額へ押しいただいたあとに香炉へくべます。
臨済宗・曹洞宗
臨済宗・曹洞宗の本式数珠は「看経念珠」と呼ばれています。片方だけに房がある特徴的な形です。
ただし、曹洞宗の本式数珠には「百八環金」と呼ばれる輪がくぐられており、臨済宗には輪がありません。
<合掌時の持ち方>
2輪にし、親指と人差し指に掛けるよう左手に掛けます。曹洞宗の場合は百八環金が房の方に来るよう持ちましょう。
<焼香時の作法>
臨済宗の焼香は1回で、額に押し頂かずに胸の高さ程度まで上げたのち、香炉へくべます。
曹洞宗は1回目を額に押しいただき、2回目は胸の高さまで上げて香炉へくべましょう。
天台宗
天台宗の本式数珠は、平たい玉を用いているのが特徴です。
<合掌時の持ち方>
数珠を左手首に掛け、そのまま手を合わせます。房は自然に下に垂らします。
左の親指と人差し指の間に数珠を掛け、親玉を上にして房が手のひら側に来るよう持つ方法もあります。
派によって持ち方が異なるため、菩提寺に聞いておくとよいでしょう。
<焼香時の作法>
焼香は1〜3回行います。回数に特に決まりはありません。
葬儀における数珠のマナー
葬儀で数珠を使用する際には、以下の点に注意しましょう。
- 数珠の貸し借りはしない
- 座布団・椅子・床の上には置かない
- 葬儀用の数珠以外を使わない
数珠は、故人への敬意を表す大切な法具です。正しい使い方を理解し、失礼のないよう丁寧に扱いましょう。
数珠の貸し借りはしない
数珠は、持ち主の分身であり魂を表した物です。仏様と持ち主をつなぐ仏具ともいわれています。
そのため、他人に貸したり借りたりするのは避けましょう。もし数珠を忘れてしまった場合は、数珠なしで参列したほうが無難です。
座布団・椅子・床の上には置かない
数珠は、仏様のいる浄土と現世をつなぐ大切な仏具なため、丁寧に扱うのが基本です。
数珠を小さな仏様ととらえ、お尻や足を置く場所には置かないようにしましょう。
移動する際は、手に持つ、バッグに入れる、ポケットに入れる、などの方法で持ち運びましょう。
葬儀用の数珠以外を使わない
パワーストーンやアクセサリー用のブレスレットは、一見数珠に見えなくもありませんが、葬儀の場には不適切です。
正式に数珠として販売されている物を選びましょう。
数珠の選び方
本式数珠の場合、宗派によって種類が異なります。
どの宗派にも用いられる略式数珠であっても、女性用・男性用などがあるため、どの数珠を選んでいいか迷う方もいらっしゃるでしょう。
本章では、以下の基準における数珠の選び方を解説します。
- 性別による選び方
- 色による選び方
ひとつずつ見ていきましょう。
性別による選び方
数珠は、男性用と女性用で玉の大きさが異なります。
男性用は玉が10mm以上で、女性用は玉が8mm以上です。
男女兼用の数珠は存在しません。ご自身の性別の数珠で、手に馴染む物を選びましょう。
なお、近年は子ども用にアクリルで作られた数珠も存在します。
色による選び方
数珠の色は、特に決まりはありません。一般的には、男性用は暗色、女性用は明るい色が多いです。
素材によっても色が異なり・水晶・サンゴ・真珠など、さまざまな種類があります。
地方によっては、色や素材の使い分けに細かいルールが決まっている場合もあるため、地元の葬儀社や菩提寺に相談するのがおすすめです。
数珠の購入方法
数珠は、以下の店舗で購入できます。
- 仏具専門店
- 紳士服専門店
- ショッピングセンター
- ホームセンター
- 100円均一
- ネット通販…など
予算に合わせた購入場所を選ぶのがよいでしょう。
急ぎの場合は100円均一で購入しても問題ありません。
本格的な数珠を用意したい場合は、仏具専門店・紳士服専門店・ネット通販がおすすめです。
高すぎず、かつしっかりした数珠を用意したい方は、ホームセンターが最適です。
100円均一で数珠を購入した場合、すぐに壊れてしまう可能性があるほか、よく見ると正式な数珠と違う点が多いため、しっかりとした数珠を1つ持っているとよいでしょう。
【Q&A】葬儀の数珠に関してよくある質問
葬儀の数珠に関してよくある質問をまとめました。
Q.どうしても数珠を用意できない場合
Q.子どもも数珠を用意したほうがいい?
ひとつずつ回答します。
Q.どうしても数珠を用意できない場合
A.数珠の持参はマナーであるものの、必須ではありません。
できれば用意したほうがいいですが、どうしても良いできない場合は無くても問題はありません。手を合わせて、心からの供養を願うのが大切です。
Q.子どもも数珠を用意したほうがいい?
A.どちらでも構いません。
数珠を丁寧に扱えるようになるまで持参しない方法もありますし、子ども用の数珠を用意する方法もあります。
まとめ:葬儀に参列する際は自分の数珠を持参する
数珠とは、通夜・葬儀・告別式で使用する法具です。本来はお経の回数を数えるために使われていましたが、現代では供養の気持ちを伝える意味を持ち、一般参列者も持つようになっています。
葬儀に数珠を持っていくのはマナーですが、どうしても用意できない場合は数珠が無くても問題はありません。
数珠を持つ意味を理解しながらも、手を合わせて心からの供養を伝えるのが大切です。