「葬儀に参列したとき、何て挨拶したらいい?」
「間違ったことを言ってしまわないか心配」
「失礼にならない言葉の選び方を知りたい」
葬儀に参列する際は、適切な挨拶が求められます。
ちょっとした一言で、ご遺族を傷つけることや、反対に元気付ける場合も少なくありません。
本記事では、葬儀参列時に使える具体的な挨拶例や、避けるべき言葉について解説します。
ご遺族に配慮した挨拶を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
<この記事でわかること> ・葬儀での挨拶の基本 ・葬儀での一般的な挨拶文 ・故人の状況別の挨拶文 ・故人の宗教別の挨拶文 |
葬儀参列時の挨拶の基本
葬儀に参列する際は、故人への弔いの気持ちとともに、ご遺族への配慮も大切です。
参列者は、以下の点を意識してご遺族や受付係に挨拶を伝えましょう。
- 挨拶のタイミングと場所
- 挨拶は手短に済ませる
- 葬儀参列時のタブーな言葉
ひとつずつ見ていきましょう。
挨拶は手短に済ませる
葬儀で挨拶をする際は、手短に済ませるのがマナーです。
ご遺族は葬儀の準備や参列者への対応に追われているため、長々と挨拶をすると迷惑になる可能性があります。
また、声のトーンも抑える必要があります。葬儀は故人の逝去を偲ぶ場であり、明るい挨拶をするための所ではないためです。
挨拶のタイミングと場所
参列者が葬儀で挨拶をするタイミングは、大きく2つあります。
- 葬儀の受付で香典を渡すとき
- ご遺族とお会いしたとき
葬儀の受付で香典をお渡しする際に簡単な挨拶を述べます。
また、葬儀場でご遺族に直接会った際も、短く挨拶をしましょう。
挨拶の際はご遺族の気持ちを第一に考え、自分の伝えたいことよりも、まずは相手を思いやる言葉をかける配慮が大切です。
葬儀参列時のタブーな言葉
葬儀の場では、ご遺族の心情を傷つける可能性のある言葉や、不吉な表現を避けるべきと考えられています。
挨拶の際に使ってはいけない言葉や避けるべき表現は以下のとおりです。
- 忌み言葉は使わない
- 死因は尋ねない
- 励ましの言葉は使わない
ひとつずつ見ていきましょう。
忌み言葉は使わない
葬儀の場では、使用を控えるべきとされている「忌み言葉(いみことば)」があります。
例えば、不幸の連続や繰り返しを連想させる「重ね言葉」です。
重ね言葉 |
---|
次々・再三・ますます・再び・何度も…など |
くれぐれも、まだまだ、も控えるべき重ね言葉です。どうしても使いたい場合は「どうぞ」や「もっと」などに言い換えましょう。
また、直接的な表現も控えるべきとされています。具体例と言い換え方は、以下のとおりです。
直接的な表現 | 言い換え |
---|---|
死ぬ・死亡 | 逝去 |
生きる・生存 | ご生前 |
生きていた頃 | お元気な頃 |
ほかにも、成仏できないことを連想する「迷う」「浮かばれない」も、使用は控えましょう。
死因は尋ねない
死因について、参列者から尋ねてはいけません。
死因を聞くことで、ご遺族に精神的負担をかける可能性があるためです。
故人の死因は、病気・事故・自殺など、さまざまな要因が考えられます。
死因の話題を持ち出したために、ご遺族が抱える後悔や悲しみを深める恐れがあります。
友人や知人が亡くなった場合でも同様に、死因について聞かないのがマナーです。
ご遺族の心情に寄り添い、短く哀悼の意を示しましょう。
励ましの言葉は使わない
葬儀でご遺族に励ましの言葉を伝えるのも控えるべきとされています。
ご遺族を支えたい気持ちから「元気を出して」「頑張ってください」といった言葉が出るかもしれませんが、逆に心を傷つける可能性があります。
ご遺族はすでに最大限頑張っている状況であり、これ以上の負担をかけるべきではありません。
「お気持ちをお察しします」など、寄り添う言葉を選び、ご遺族に安心感を与えるのが大切です。
一般的な葬儀での挨拶
葬儀の場で使用する一般的な挨拶には、以下の4つがあります。
- お悔やみ申し上げます
- ご愁傷様です
- 哀悼の意を表します
- ご冥福をお祈りいたします
言葉の意味や使用シーンを見ていきましょう。
お悔やみ申し上げます
「心よりお悔やみ申し上げます」
「この度は心からお悔やみ申し上げます」 |
ご遺族に対する哀悼の意を表す最も一般的な言葉です。
「悔やむ」には後悔するという意味があり、亡くなった方を惜しむ気持ちを伝える際に使用します。
口語・文語のいずれにも使用でき、受付やご遺族と対面したときだけでなく、メールや手紙でも使用できます。
ご愁傷様です
「この度はご愁傷様でございます」
「この度はご愁傷様です」 |
ご遺族の心情に寄り添う言葉として広く使われます。
ご遺族に直接お会いした際に口頭で伝えるのが一般的です。
会話でのみ使用できる「口語」に該当するため、文面での使用は避けたほうがよいとされています。
近年は、からかいのニュアンスで使われる場合があるため「葬儀では不適切」という意見もありますが、使用しても失礼には当たりません。
哀悼の意を表します
「○○様のご逝去に接し、心から哀悼の意を表します」
「悲しみをお察ししますとともに、心より哀悼の意を表します」 |
亡くなった方を悼む気持ちを表現する言葉です。
口語ではないため、主に弔電やメールで使用されます。
葬儀場で直接ご遺族に伝えるには適切ではないため、場面に応じた使い分けが必要です。
ご冥福をお祈りいたします
「○○様のご冥福を心からお祈り申し上げます」
「謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします」 |
ご遺族ではなく、亡くなった方に向けた言葉です。
葬儀でのスピーチ(弔辞)・メール・手紙で使用するのが一般的で、ご遺族に直接伝える際には控えるべき表現とされています。
故人の状況別の挨拶
葬儀参列時の挨拶は、基本的に「ご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」で問題はありません。
しかし、もう一言添えたい場合は、故人の状況によって挨拶の内容を適切に選ぶのが大切です。
本章では、以下の条件に応じた挨拶の文例を解説します。
- 故人がご高齢だった場合の挨拶
- 故人が闘病の末亡くなった場合の挨拶
- 故人が事故死や急死だった場合の挨拶
- 故人が未成年だった場合の挨拶
故人の状況ごとに適した挨拶例と注意点を見ていきましょう。
故人がご高齢だった場合の挨拶
「この間までお元気だったのに、残念でなりません」
「まさかという気持ちでいっぱいです」 「お母様には大変お世話になりました。残念でなりません」 |
故人がご高齢だった場合、「大往生」という表現は避けましょう。
長生きした方に使用する言葉ですが、ご遺族以外が使用するのはマナー違反とされています。
ただし「もっと長生きしてほしかった」「もっと生きていてほしかった」という表現は、用いてもよいとされています。
故人が闘病の末亡くなった場合の挨拶
「なんと申し上げてよいやら、言葉も見つかりません」
「きっと回復してくれると信じて祈っておりました」 |
闘病の末に亡くなった場合「どうぞご自身を責めないでください」のように、看病に尽力したご遺族を労う言葉を添えましょう。
また、お見舞いに行けなかった場合は「お見舞いにも伺えず、失礼いたしました」と一言添えるだけで十分です。
お見舞いに行けなかった理由は、この場で伝える必要はありません。
ほかにも、療養中の詳細を尋ねるのは控えましょう。ご遺族の辛い気持ちを思い起こさせてしまう可能性があるためです。
故人が事故死や急死だった場合の挨拶
「あまりに突然のことで、まだ信じられない思いです」
「なんと申し上げてよいか、慰めの言葉もありません」 |
事故や急死で亡くなった場合、ご遺族は突然の別れに大きな精神的ショックを受けています。
事故の詳細を尋ねたり、不用意な質問をしたりは避けましょう。
故人が未成年だった場合の挨拶
「お元気だった頃を思い出すと、胸が張り裂けそうです」
「このようなことになるとは、まだ信じられません」 「お気持ちを思うと、言葉が見つかりません」 |
故人が未成年の場合、ご遺族は自責の念に駆られている可能性が高いです。
慰めの言葉も大切ですが、シンプルにお悔やみの言葉を伝えるほうがよいでしょう。
故人の宗教別の挨拶
日本では仏教式の葬儀が一般的ですが、故人が仏教以外の宗教を信仰していた場合は、宗教宗派に適した挨拶が必要です。
本章では、以下の宗教宗派に分けて挨拶の文例を紹介します。
- 神式の場合の挨拶
- キリスト教式の場合の挨拶
ご遺族に失礼がないよう、挨拶の基本を理解しておきましょう。
神式の場合の挨拶
「ご平安をお祈り申し上げます」
「御霊(みたま)のご平安をお祈りします」 |
もし挨拶に迷った場合は、シンプルに「この度はご愁傷様でした」と述べるのが無難です。
神道では「成仏」や「ご冥福」など仏教特有の言葉は避けましょう。
「冥土」や「あの世」といった言葉もNGとされています。
キリスト教式の場合の挨拶
「安らかに眠られますようお祈り申し上げます」
「安らかな旅立ちでありますように」 |
キリスト教では、仏教特有の言葉である「成仏」「ご冥福」「冥土」「極楽」といった表現は避けましょう。
「死」を悲しいものと捉えないのがキリスト教の考え方のため、仏教のように死を悲しむ言葉は使用するべきでないとされています。
挨拶以外で葬儀参列時に気をつけるべきこと
葬儀に参列する際、挨拶だけでなく服装や持ち物などへの配慮も必要です。
本書では、基本的な以下のマナーについて解説します。
- 服装|準喪服を着用する
- 香典の額|故人との関係性によって決める
- 持ち物|数珠とハンカチは必須
ひとつずつ見ていきましょう。
服装|準喪服を着用する
葬儀では、お通夜と告別式のいずれも喪服を着用するのが基本です。
ただし、お通夜に急遽参列することになり、どうしても間に合わない場合は喪服でなくても問題ありません。
可能であれば、黒や濃紺など控えめな色合いの服装を選びましょう。
男性|準喪服のマナー
男性の準喪服は、黒のスーツが基本です。
ビジネススーツではなく、専用のフォーマルスーツを選びましょう。
合わせるアイテムは、白いシャツ、黒のネクタイ・靴・靴下です。
ベルトも黒を使用し、派手なデザインは避けましょう。
腕時計やアクセサリーも外すのがマナーです。
男性の準喪服について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事】初めての葬儀に備える服装のマナー|性別・年齢別で注意点を解説 |
女性|準喪服のマナー
女性の準喪服は、黒のスーツやワンピース、アンサンブルが適しています。
ストッキングやパンプスも黒を選び、アクセサリーについては、基本的に外しましょう。
ただし、真珠のイヤリングやネックレスは涙を意味するアクセサリーとして許容されています。
真珠のネックレスでも、二連のものは「不幸が重なる」という意味から避けるべきとされています。
女性の準喪服について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
【関連記事】初めての葬儀に備える服装のマナー|性別・年齢別で注意点を解説 |
香典の額|故人との関係性によって決める
葬儀参列時、香典を持参するのは基本的なマナーです。
香典の金額は故人との関係性や自身の年齢によって異なり、一般的な目安として以下のように調整します。
故人との関係 | 香典の相場 |
---|---|
親 | 5〜10万円 |
兄弟姉妹 | 3〜10万円 |
祖父母 | 1〜5万円 |
親戚 | 5千円〜3万円 |
友人 | 5千円〜1万円 |
会社関係者 | 5千円〜1万円 |
ご近所さん | 3千円〜1万円 |
親族や親しい友人には多めの額を包むのが一般的です。
香典の表書きは「御霊前」とし、中袋に金額を記入します。金額は、漢数字の大字を使用しましょう。
中袋の裏面の左下には、住所と氏名を記入します。
中袋がない場合は裏面右側に金額、左下に住所と氏名を記載します。
香典は薄墨で記入するというマナーが存在しますが、北海道では墨汁が主流です。
持ち物|数珠とハンカチは必須
数珠とハンカチは、葬儀に必須の持ち物です。数珠は自身の宗派のものでかまいません。
ハンカチは黒または白で、柄やプリントがないものを選びます。2枚持っておくと、何かあったときに安心です。袱紗を忘れた場合の代用品としても活用できます。
ほかにも、香典を包む際の袱紗も用意しましょう。弔事の場では、寒色系で無地のものが適しているとされています。
暖色系はマナー違反となるため、選ぶ際は注意が必要です。
葬儀に参列できない場合の挨拶の方法
葬儀に参列できない場合の弔意の伝え方には、以下の方法があります。
- 供花を送る
- 電報(弔電)を打つ
- 後日弔問に伺う
それぞれの方法を見ていきましょう。
供花を送る
供花を送るのは、弔意を表す一般的な手段のひとつです。供花は葬儀会場の祭壇に飾られます。
花店や葬儀会社に依頼して手配しますが、会場によっては持ち込みを制限している場合があるため、事前に確認するのが大切です。
供花を送る際は、お悔やみ状を添えると、より気持ちが伝わります。
電報(弔電)を打つ
弔電を送る場合は、通夜や葬儀・告別式に間に合うように手配します。
NTTの場合、14:00までの申し込みであれば当日配送が可能です。
近年は、プリザーブドフラワーやお線香をセットにした商品もあるなど、選択肢が豊富です。
弔電の文章と一緒に、心ばかりの供物を添えるのもよいでしょう。
【関連記事】家族葬での弔電や香典の正しいマナー【例文付き】送る側と受け取る側 |
後日弔問に伺う
葬儀終了後に、日を改めて弔問へ伺い、挨拶をする方法もあります。
弔問の際には、事前に喪主と日時を調整し、突然の訪問は避けます。
弔問時に香典や供花を用意するのもよいでしょう。
ただし、葬儀で代理人を通じて香典を渡している場合は、重複を避けるため、香典を用意する必要はありません。
【ご遺族】お悔やみ言葉への返答
ご遺族側の立場で「ご愁傷様です」や「お悔やみ申し上げます」と伝えられた際には、「恐れ入ります」「ありがとうございます」と返すのが一般的です。
また「お世話になりました」や「痛み入ります」も応答として適切です。
「お忙しいところ参列していただきありがとうございます」や「故人も喜んでいると思います」といった感謝や、故人への想いを伝えてもよいでしょう。
まとめ:葬儀参列時はご遺族に配慮した挨拶を心がけましょう
葬儀参列時には、ご遺族の気持ちに寄り添った適切な挨拶をするのが大切です。
挨拶は手短に済ませ「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷様です」などの定型文を使うとよいでしょう。
忌み言葉や励ましの表現、死因を尋ねるのは避けましょう。葬儀での挨拶は、ご遺族の心情に寄り添う言葉選びが大切です。